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業態もエリアも飛び越えて、人と人を繋ぐ

―富田 健  店長

現在弊社一号店の『金子屋 秋葉原店』で店長を務める富田氏(以下富ちゃん)は個性的な人が多いGCCPの中で誰もが接しやすいと思える空気を作れる男。

誰にでもフラットな性格で接しやすいあまりに、酒の場で込み入った話をしだすと止まらなくなり終電を逃す羽目になる。何回タクシーで帰宅したことか。
防衛策としてアラームをしっかりセットし自分の身を守ることをお勧めする。
彼の名誉のためにも話が長いという事ではないと書き加えておく。

基本フラットで接するようにしている。

『冨田がいけば回せる』と頼りにされ、以前まではエリア、業態を超えてヘルプを任されることも多かった。
通常そうなってきた時に発生する問題の一つとして従業員との関係性が成り立っていない中で営業に臨まないといけない事。
そんな中で従業員と接する時に気を付けていることを聞くと『笑顔!ファーストコンタクトは笑顔!あと言葉尻だったり!社員はみんな知っているけどアルバイトの子たちは特にね!接しやすいようにとか変に気にせず基本フラットで接するようにしている。』読者の想像の4倍は大きい声でこう話す。

育ってきた地域、環境、雇用形態、性別に年齢も違う従業員が一緒に働く現場。これが普通な飲食業はなんて特殊なのだろうと思う。
そんな中で関係性を築く潤滑油となるコミュニケーション。これが足りないとお互いの意思はかみ合わず、伝わらないし受け取れない、良い関係性は築けず、良い雰囲気なんて作れない。
初めましてでも分け隔てなく接することができるコミュ力が冨ちゃんの武器だ。あと持ち前の元気。
『元気ないときもあるよ!いつだろ!?二日酔いの時とか!』冗談で笑いをとったあと『意図的にやってる部分もあるよ。歳取ってからの方が(元気だねって)いわれるようになったかも。根っから明るいけど若いときはやっぱスカしてたり、カッコつけたりしてた。尖ってたし。』

声を普通の人のトーンに落とし話すからつい聞き入ってしまう。これをテクニックとしてやっているかは不明だ。
北海道は流氷、刑務所が有名な地域から上京したギラついたバンドマンだった冨ちゃん。東京での生活は既に地元で過ごした時間を超えている。そんな冨ちゃんの東京で生活して生きた中での経験が少し垣間見えた気がする。

やっぱり人との関わり。

入社して12年。離職率が高い飲食業界で10年以上一つの会社に在籍する人は珍しいと言っていい。そんな中で続けられた理由などがあったのか聞いてみる。

『もともとやりたかった業態(ラーメン)も閉店した、もういいかなって思ったこともあった。そんな時に俺のことを坂下良酒倉庫(神楽坂)に誘ってくれた同僚二人がいて。すげー大変だったんだけど楽しくて。そこかな転機は。救われたというか。』
続けてこう話す。『やっぱり人との関わりかな。関わる人が多くなるとやっぱり愛着がわくし。』

今回冨ちゃんの話を聞いていてこう思った。人とのコミュニケーションや関わりを大事にしているのは、自分が落ちてるときや困っているときに関わってきた人たちに救われたことへ感謝しているからなのだろうと。
自分(筆者)が働いていた現場で従業員はもちろん常連様からも『冨ちゃんは?元気?』なんて聞かれるのも納得だ。

数字じゃ表現しづらい雰囲気

我々は焼とんを扱う大衆酒場が好きだ。味も雰囲気も文化的背景も含めて。
視察とかでなく完全プライベートの休日でも時間を合わせて行くこともある。
某海外アーティスト16年ぶりの来日コンサートの時も、開場より早く集合し焼きとんを瓶ビールで流し込み会場へ。終了後は秋葉原の自店へ移動、これまた飽きずに焼きとんともつ煮で余韻に浸った。

串から外してシェアしたりせず一人一本。肉汁の旨味を逃すまいとするのと、そっちの方が粋だと思っているから。やかましい奴らだと思ってもらって構わない。
最後に冨ちゃんにとっての大衆酒場とは?と聞いてみた。
『人。活気のある場所。すごく抽象的だけど、ものすごく重要だよね。数字じゃ表現しづらい雰囲気の部分を大事にしたいっていうか。大衆ってそういう感じじゃない?そもそも誰でも行けるところじゃん本来?敷居の低い場所っていうか。堅さがないっていうか。』

営業を円滑に進める為に独自のルールを持つ名店は多いが、ドレスコードを設けた格式高い大衆酒場はないだろう。
もしイギリスのパブ(※イギリス発祥の大衆酒場でPublic House(公共の家)を略したもの)の敷居が高かったら地域の人が集まる社交場としての発展はなかっただろうし、東京ドーム二日間ソールドアウトのマンチェスター出身のバンドも存在していなかったかもしれない。

このインタビューを読んだ人は一度冨ちゃんのいる『金子屋 秋葉原店』に行ってみてほしい。
ご多分に漏れず弊社もモバイルオーダーを導入しているが、そんな中でも失われないお客様との接点や、我々が大事にしてきた先人たちの思いを受け継いできた大衆酒場の雰囲気。
数字は嘘つかないというが、点数や数値じゃ表せない感覚的な部分がきっと彼のいる店舗の営業からは感じられるはずだから。

STAFF
TEXT: Masami Wakasa
PHOTO: Yuta Kobayashi
September, 2026